どきたんドットコムトピックス>「平沢弥陀の杉」の折損事故について(おさらい)

平成20年に発生した「平沢弥陀の杉」の折損事故について(おさらい)

 蔵王町大字平沢字丈六の地にそびえる県下有数の巨樹「平沢弥陀の杉」は、春になると若木のように新葉を伸ばし、一見、樹勢は旺盛と見受けられます。しかしこの杉は、樹齢850〜900年という老樹であり、また、過去に根元を大きく傷つけられていることもあって、見た目ほどには健全な状態ではないようで、これまで何度か大枝や支幹が折れるという悲しい事故が起きています。教育委員会では、その都度傷口の防腐処理・閉塞処理などの樹勢回復作業を実施してきました。

 最近の折損事故は平成20年(2008)5月31日に発生しました。元々この杉は地上7〜9mほどの高さで4本の支幹に分岐していたのですが、そのうち最も細い1本が根こそぎ折損してしまったのです。「最も細い」とは言いながら、その支幹は、根元部の直径約1m、周囲約3m、全長約20mもあるものでした。〔地上1.3mの高さにおいて、幹周りが3m以上〕というのが一般的な巨樹・巨木の基準ですので、今回折損した支幹はそれだけで立派な巨木クラスの大きさだったということになります。さすがは県下有数の巨樹だけあって、なんともスケールの大きな話ですが、それだけダメージも大きいということです。

 宮城県文化財保護審議委員や樹木医など、専門家の皆さんに検分していただいたところ、長い年月のうちにそれぞれの支幹が成長して互いに押し合うような力がかかっていたところに、枝葉に付着した雨水(折損する数日前から当日にかけてしとしと雨が降り続いていました)の重さが加わり、ついに支えきれなくなって折れたのだ、と、原因が推定されました。また、傷口を観察したところ、樹木内部の腐朽も認められました。内部腐朽は老木であればたいていは認められる現象ですが、放置すれば樹木の衰弱が激しくなることから、何らかの対策が必要とされました。

 平成20年9月、傷口の応急手当・樹木内部の状態把握のための応急的な樹勢回復作業を行いました。その結果、どうやらこの木の内部は、根元から梢の方まで内部腐朽が進んでおり、全体にやや強度が落ちているということが把握されました。そして、今後、できるだけ内部の腐朽材を削り取ること、広範囲に防腐処理を施すこと、水やごみがはいりこまないように傷口を覆うこと、横方向に張り出している大枝に支柱を設置することなど、大がかりな樹勢回復作業を行うことになりました。これらの作業は、平成21年度・22年度の2ヵ年度にわたって実施していく予定です。

※平沢弥陀の杉の樹木内部に腐朽が広がっていること、大枝などを支える力がやや落ちていることなどは事実ですが、近い将来、この木が根こそぎ倒れるなど、大規模な事故が発生するおそれはないと推測されています。従って当教育委員会では、今後当分の間は可能な限りの保存対策を講じていきたいと考えています。

「平沢弥陀の杉」支幹折損事故発生(平成20年5月31日)
折れた支幹は樹下の「だるま堂社務所」を直撃!全壊させてしまいました
折損直後のようす。近所の人のお話によると、ものすごい轟音がしたそうです 幹側の傷口。支幹が木本体から「はがれ落ち」るように折れたことがわかります

折損部分の除去作業(平成20年7月)
真横から。このアングルだと、あまり大きさが際立ちません。折損事故から1ヶ月以上が経過しても、大半の葉は青々としたまま。生命力の強さを物語っています。 クレーンで吊って、高所作業車に乗って切断します。だんだん大きさが把握できてきましたね
チェンソーで短く切断。人間が小さく見えます

応急樹勢回復作業(平成20年9月)
幹側の傷口を手当します。やはり高所作業車が出動。杉の大きさに圧倒されます 樹勢回復作業終了。黄色い部分は防腐剤を塗った部分
傷口のささくれや、腐朽部分をかき落とす作業。応急手当にもかかわらず、2人がかりで数時間の大仕事
ゴンドラと比べると、傷口の大きさがよくわかります かき出された木っ端くず。これでもごく表面的な手当てです
整形した傷口に、防腐剤とコーティング剤を塗ります 傷口部分のアップ。内部が腐朽し、空洞ができているのが見えます。ちなみに地上7mほど。けっこう足がすくむ高さです!

平成21年5月18日更新<Y>


>>>お知らせ一覧へもどる<<<    >>>トピックス一覧へもどる<<<    >>>ホームページへもどる<<<